バイオスティミュラントと肥料の違いは?
バイオスティミュラント資材は現時点では法律がなく、規制もなく、定義もありません。インターネットで検索すると、農薬でもない、肥料でもない、土壌改良剤でもないと書かれているページをよく見かけます。なかにはサプリメントのようなものだと書いてあるページも見つかります。バイオスティミュラント資材には病気を治療したり、害虫を寄せ付けない成分は入っていません(植物の能力を引き出し、結果的に病気に強くなることは考えられます)し、肥料ではないと断言できるのであれば、栄養が入っているわけでもないはずです。
肥料については、肥料の品質の確保等に関する法律の第二条に定義が明記されています。(1)植物の栄養に供すること (2)植物の栽培に資するため土壌に化学的変化をもたらすことを目的として土地に施される物 (3)植物の栄養に供することを目的として植物に施される物です。肥料には「特殊肥料」と「普通肥料」があり、特殊肥料とは、米ぬかや堆肥等を用いたもので、普通肥料はそれ以外のもの。このほか、管轄する都道府県への登録が義務付けられるなど、肥料は法律で様々な決まりごとがあります。
初見では非常に読みにくいですが、まだ読んだことのない方は一度、目を通してみてはいかがでしょうか。肥料の品質の確保等に関する法律(昭和二十五年法律第百二十七号)
農薬は人でいうところの薬に相当する。これはわかりやすいでしょう。肥料はというと、人でいうところの、一般食品(肉や魚や野菜、米など)に相当するものでしょうか。少し脇道にそれまずが、どこのWEBサイトだったか忘れてしまいましたが、○○山からの伏流水と肥沃な土地が育んだ作物を是非!というようなことが書かれていました。肥料を一切使わず、美味しい作物ができるとは、なんて素晴らしいことかと思うのですが、同じ土地で毎年何かしら収穫していたら、土地は徐々に痩せてしまいそうです。
人が口にするサプリメントは厚生労働省によれば、一般的に「特定成分が凝縮された錠剤やカプセル形態の製品」と表現するそうです。私自身、視力が低く、ドラッグストア等のサプリメント売り場の前を通るとブルーベリー何個分のアントシアニンが入った!と謳う、紫や濃い青の包装が目に飛び込んできます。テレビCMやWEB広告でも度々、目にするので紫色を見ると商品や広告には何も書いてなくてもアントシアニンの文字が頭に浮かぶほどです。
世のなかにあるサプリメントの類がそうですが、「あくまでも個人の感想です」「3か月以上飲んだ方の感想です」というような、すぐに効果はなく、効果があっても個人差があること広告の隅のほうに小さく書いてあるのを見たことがありませんか? 飲んですぐに実感できたらいいのですが、そういうものはほとんどないでしょう。メーカー側が成分数を減らして、意図的に効果を弱めているのではなく、サプリメントで得た成分が、実際に身体に浸透して、それまで特定の栄養が不足して動かせなかった機能を蘇らせるように細胞が変化するまでに時間がかかるということだろうと思います。効果がすぐに実感できれば、消費者側も喜んで買うと思いますが、実際のところは効果を実感できず辞めてしまう方も多いでしょう。メーカー側もまずはお試し30日間無料キャンペーンをしたり、効果がでなかったら返金します!と謳ったり、あの手この手で消費者のきっかけづくりや継続して効果を実感してもらえるまでのサービスで引きつけるなど、メーカー側の努力が見られます。
バイオスティミュラント資材もサプリメントと同様に、本当に効果があるのなら今すぐ使いたい生産者もいるはずです。しかし、登録も審査も罰則も何もない商品を使い、何も効果がなければ時間もお金も無駄になる。初めから効果がないと分かっていれば、買わない方がよかったと後悔するはずです。徒労だけならまだいいほうで、もしも、自分たちの作物を購入した商品者に健康被害が出たら一体どうすればいいのか。バイオスティミュラント資材という素晴らしい商品がいま盛んに開発・販売されていて、お宅でも使ってみませんか?なんて、話を聞かされた生産者の方々にとってみれば、突如、足元も定まらない濃霧のなかに置いて行かれたような気分ではないでしょうか。前に1歩進めばガケかもしれない、いや、後ろもガケかもしれない。でも、騙されたと思って、ジャンプしたら霧から抜けられるかもしれません。祖先から受け継いできた土地で、そんな大博打ができるものでしょうか。
バイオスティミュラント資材を自分の圃場で使うには、やはり実証結果が大事だと思います。販売するメーカーが効果を謳うのは当然ですが、生産者と同じく商品を買う側、そして消費者に作物を提供する立場による実証です。大規模法人なら、自分たちの実験圃場を作ることも可能だと思いますが、特に水稲栽培の小規模生産者がチャレンジするのは難しいでしょう。ぜひ、地元のJAと相談して、バイオスティミュラント資材の試験を地元で実施してみてはいかがでしょうか。メーカーの実施した圃場と各地域の生産者の圃場では環境も異なるでしょう。やはり最後は地元の土地での成功事例が何よりも購買力につながるのではないでしょうか。もし潤沢な資金のあるメーカー様がいらっしゃいましたら、全国各地で試験をして、生産者の心をわしづかみにしていただけたらと思います。効果の高いバイオスティミュラント資材が日本の農業の発展に寄与することを切に願います。